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これで終わりではない?台湾の同性婚法案の最新事情

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行政院(内閣)は21日、同性同士の婚姻を法的に保障する特別法案「司法院釈字第748号解釈施行法」を閣議決定しました。18歳以上の同性同士の婚姻の自由を保障するもので、立法院(国会)での審議を経て、早ければ5月24日より施行されます。(台湾で「同性婚」が成立したと書かれているメディアもありますが、立法院での審議を通過してはじめて法として成立するため、まだこの記事が執筆された2019年2月26日現在では、法案の状態です。)

一見「同性婚が認められた!」という嬉しいニュースのように感じられますが、今現地で起きていることをチェックしてみると、同性愛者にプラスの側面はあるものの、その背景で様々な反発も起きている様子。今回は、台湾で起きている同性婚に関する法案についての詳細と、台湾社会の反応についても取り上げてみたいと思います。

具体的に何ができるようになるの?

法案が認められると下記の項目において、同性愛者が異性愛者の方と同じ権利を得られるようになります。

配偶者による手術同意書へのサインなど医療権の保障

事故などの緊急時に本人でなくてもパートナーは手術に同意することができるようになります。日本でも同性愛者のパートナーが入院した際などに「ご家族ですか?」と聞かれることに対して、一瞬ドキっとするという話を耳にすることがあります。生涯を共にするパートナーに何かがあった時、家族ではないという理由で、決定権を持てなかったり、面会できないということが無くなるというのは素晴らしいことですね。

遺産相続の権利が得られる

遺産相続ができるようになるため、パートナーの親族がすべて遺産を取ってしまい、自分は遺産がもらえなかったというケースがなくなります。もし何かあった際、愛している人に自分の財産を残したいと思うその気持ちを、法律に守られて実現できるようになります。

結婚相手の扶養に入ることができ、配偶者控除が受けられる

異性愛者の方と同様に、扶養に入ることで様々な控除を受けられるようになります。税金の負担額が減るため、一人は働きに出つつ、もう一方のパートナーは家事従事やパートとして働くなどの暮らし方もしやすくなりますね。配偶者手当の受け取りも異性愛者同様、可能になります。もしも、パートナーが何かの理由で働けなくなった時、扶養システムの恩恵を受けられるかどうかは生活に大きく影響するところでしょう。

どちらかの当事者の血縁関係にある子どもを養子にすることができる

制限はありますが、子どもを持つことができるようになります。この項目によって「代理母から生まれた子どもを養子として迎え入れることができる」など、同性愛カップルの家族のあり方が広がりそうです。

今回の法案ではできないこともある

残念ながら、今回の法案では叶えられないこともいくつかあります。

同性婚を認めていない国の同性の外国人とは法的なパートナーになれない

ここが、私たち日本人に一番関わる項目でしょう。日本は同性婚をまだ認めていない国のため、今回の法律でも、日本人は同性の台湾人と結婚することができません。同性愛が認められていない国の人が、台湾で台湾人のパートナーと結婚するためには、国籍を捨てて台湾人にならないといけません。外国人にとってはハードルがかなり高いため「この法案で結婚ができる!」と思っていた台湾人のパートナーがいる方にはショックな点かもしれません。

血縁ではない子どもを養子にできない

異性のカップルは児童養護施設の子どもなど、血縁がなくても養子にすることができますが、同性カップルではそれができません。今後、養子をとることが同性愛のカップルが子どもをもつ手段の1つとして、台湾でも当たり前に社会に受け入れられる日が来ることを願いたいと思います。

法案に乗じて起こっている問題について

同性愛に関する法案が進んでいく中で、その変化への反発も起きているようです。今回の法案の中には、「いかなる個人あるいは団体も信仰の自由及びその他の自由を享受する権利を持ち、この法案の施行による影響を受けない」という一文が明記されており、それに起因して「信仰の自由」を理由に、

  • 同性カップルの婚姻表の受理を拒絶する
  • 同性カップルへのケーキの購入の拒否する
  • 職場から解雇される

など、様々な事件が起きていると『Gay star news』や『Pink news』でも、報道されています。

この「差別の正当化」とも言える動きを、政府がどのように対処し当事者を守っていくのか、今後、見過ごせないポイントです。

アジア初の「同性婚」と報道されているものの、厳密には違う?

一般的には、結婚に準じた制度を「シビル・ユニオン(または、シビル・パートナーシップ)」と呼び、異性愛者の結婚と同じ権利を法的に保障するものを「同性婚」と呼びます。

様々なニュースで、「台湾で同性婚ができるようになる」と報じられているものの、実態を調べて見ると、一部制限付きの制度であることは前述しました。つまり異性間の結婚と同じ権利を保障するわけではないため、厳密に定義するならば、今回の法案は「シビル・ユニオン(または、シビル・パートナーシップ)」に区分されるものと言えるでしょう。

まとめ

今回は、台湾の同性婚法案に関する詳細と、それに準じて起きている社会の反発についてご紹介しました。差別的な反発も出てきており、まだまだ課題のある、台湾の同性婚法案事情ですが、アジア史上初の同性間の婚姻に関する法律制定の動きは、私たち日本の当事者にとっても大きな一歩であることは間違いありません。この法律が台湾で、どう社会へ浸透していくのか、これから先の動きに、より注目していきたいところです。

参照メディア: TAIWAN TODAY / 聯合新聞網 / Gay star news [01] / Gay star news [02] / Pink news


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