
小夜子への手紙 − 何も言えずにハンカチーフを噛みしめるわ−
この記事は「ばにたす小夜子の人生糸電話(仮)」と題し、女装ツイッタラーで有名な、ばにたす・小夜子が往復書簡の形式をとりながら、現代のゲイカルチャーを、ふたりならではの鋭い視点で切り取ったり、切り取らなかったりする連載コーナーです。前回の手紙はこちら↓
前略 小夜子さま
あけましておめでとう。筆不精を極めすぎて年が明けてしまったわ。
疲れは我々にとっては深刻な問題ね。最近の私ったら、身も心も常に小太りの成人男性を抱えているような重みがあって、締め切りにケツぶっ叩かれないと動けないの。
安室ちゃんには申し訳ないけど今日が終わるたび胸を撫で下ろしまくりよ。
34歳で老化が急激に進むっていう文献を最近読んだけど、まさにコレがソレなの?!を痛感してるわ。
正月は8日間実家に滞在したうち、外出したのはものの数時間で、それ以外はひたすら眠・食・酒!の繰り返しだった。もう生まれ変わるなら砂とか風でお願いしたいわ。
正月といえば今回の紅白歌合戦はなんだか凄かったわね。
けん玉の緊張感がホラー映画よりも怖い三山ひろしに、紅と白・男と女の二元論を限界突破した氷川きよしと大箱のゲイナイトの様だったMISIA。
色んな声が上がったみたいだけれど、私は単純に見知ったお顔の先輩方があの紅白に出てる!っていう嬉しさに興奮しながら観ちゃった。
当事者としてそれでいいのかな?きっとそれくらいでいいのよね。
氷川キヨンセについては前回 (キヨンセみたいに生きていきたい)で言及したけれど、あれからも話題に事欠くことなくてすっかり時の人ね。前回、見た目の変貌を女性化として評してしまったのは浅はかだったと後悔しているわ。
女になりたいとかそんな話じゃなく、心の声が呼ぶ方へ、安らぎを得られる場所へ舵をとったっていう話よね。アイシャドウを塗ると落ち着く発言なんて、個人的わかるオブザイヤー2019受賞だったわ。
すっかり「出勤」が板についたあなたらしくて良いわね(笑)社会に属してないと焦燥感や疎外感にかられてしまいがちだけど、好きな事やればいいと思うわ。 #他人事 #パチンコ芸人への勧め
ショータイムやらホステス業やら王道から脱線して、私達が何か妙な事をやりたがるのは、有象無象に埋もれないために自分のチャームポイントを極めて、居場所を見つけようとしてるのかしらね。
皆が皆、弁が立つわけでもクレバーなわけでもお酒が強いわけでも踊れるわけでもないし女装にも適材適所ってあるよね。所詮中身はただの人間だもの。
その結果がパチンコ芸とストロング飲料評論家って、ガード下酔いどれ人生かよってね。
「人生はパチンコ」というか運がほとんどなのではないかって時々思う事はあるわ。
学生時代のイジメが原因で対人関係の構築が苦手になってしまい社会に出てもうまくいかず苦悩している人の話を聞いたとして、
その人がもし違う場所で生まれて違う学校へ行っていたら…
もし違うクラスに配置されていたらもし席順が違ったらいじめに合わなかったら…
青春もその後の人生も謳歌できていたかもしれないんじゃないかとか、そんな可能性を想像してしまう。
貧困ゲイやら当事者意識がない自分やら、自身の弱さをゲイの所為にしてる人の記事が出ると同じゲイから「甘えるな」とか「ゲイを言い訳にするな」って袋叩きにあうじゃない。
でも、周りと同じように真っ当に生きてきたつもりなのに気が付いたらドン底、蟻地獄にハマっていた人って結構いると思うのよね。人生の様々な分岐点で、自分では当たりを選んできたつもりが実は全部ハズレだった人って。
彼らもそんな運が悪かった一人で、そうでも思わないとやってらんない状態なんじゃないかなって思うと、簡単に斧を振り下ろすことはできずモヤモヤする。
モヤモヤをうまく言語化できる能力がないから、黙って考えてるうちに話題も過ぎ去ってしまって、いつも何も言えずにハンカチーフを噛みしめるんだけどね。
あら、身も心も重いのに話までなんだか重くなってしまったわ!
気軽なスキンケアの話でもする?最近、顔の赤みが消えませんがどうしたらいいのでしょうか?
教えて!小夜子先生!
ばにたす @ Twitter
電車や街中で出くわしたイケメンを思い切りジロジロ見る事が出来ないのが本当にストレス。第三の眼が欲しい。
— ばにたす (@vanitas5) January 14, 2020