HIV陽性ゲイのリアル03「声を出して泣けた日」

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このストーリーは連載となっています。こちらの記事 − HIV陽性ゲイのリアル連載一覧 − も合わせてご覧ください 。

HIV感染が発覚、治療開始から一年が経った頃の話です。

自分の中での治療は、「薬を毎日飲む」のと、「定期的に診察を受けに行くこと」だけ。特別なことはない、そう割り切って毎日を乗り切ってきました。「大したことない」と自分に言い聞かせて、普通の人と同じ免疫の強さになるのを目指しているだけ。

いつものように病院に行き、前回採血した分の検査結果を待つ。先生と看護師さんと、グラフや数値がプリントされた紙を見ながら、臓器や血液の状況説明を受ける。その繰り返し。

でもその日、見慣れた結果の紙に、いつもと違う色が付いていた。

『CD4』という欄の − 446 − という数値に、ピンクの蛍光ペンで大きく丸が付けられている。

『CD4』というのは体内の免疫力の指針のようなもの。

100以下やばい。入院が必要な場合も。
100代やばいけど、入院てほどではない。
200代色々注意が必要。
300代やや病弱?
400代 一般レベルの最下限 。

という風に、数値によって判断されるそうです。
僕の治療目標は、ウィルス量検出限界値以下(前回の記事で達成)と、CD4値400代。蛍光ピンクの大きな丸は、その目標へ到達したことを示していました。

先生がゴツゴツの指で、
そっとその紙をぼくに差し出す……

紙面から目をあげたぼくに、
先生と看護師さんが、とても温かい笑顔で

「頑張ったね」

と一言。

その瞬間、HIVにかかってからの毎日が次々にフラッシュバックしてきた。

  • 何をすべきかだけを考えて機械のように生きてきたこと。
  • 冷静な僕を不思議そうに見る先生と看護師さんの目。
  • そのあとイラついて薬剤師さんに当り散らしたこと。
  • 当時の上司にだけ打ち明け、泣かれたこと。
  • 大好きだった仕事をやめたこと。
  • 家族に知られたくなくて家を出たこと。
  • 毎年恒例の旅行の誘いに嘘をついて断ったこと。
  • 怪我や病気のときにHIV感染者に対応していないとたらい回しにされて、一人部屋でただ生き抜こうと耐えたこと。
  • 生きる理由も死ぬ価値も見失って絶望したこと。
  • ゲイ飲み会で「あいつポジらしい」という噂にただヘラヘラしながら、心が痛かったこと。
  • 薬を飲んだあとの熱感に毎日耐えたこと。
  • 誰かにバレないかと怯えていたこと。
  • 泊まりのときにこっそりと薬を飲む瞬間、心がチクっとしたこと。
  • 友達が遊びに来る日は、治療関係のものを必死に隠したこと。
  • 恋に踏み込めなかったこと。
  • 性欲に負けてどうでもいい人とセックスした後に落ち込んだこと。
  • 能天気な友達にキツく当たってしまったこと。
  • バレることが怖くて家族を無理やり突き放したこと。
  • 新しい仕事で自分の価値を取り戻すまで苦労したこと。
  • 勇気を出してカミングアウトしたあとに、怖くなって逃げ出した自分を責めたこと。

…… 何があっても生きようとしたこと。

「そっか。頑張ってきたんだ…」

自然と涙が出てきて、泣きました。 声を出して泣きました。 先生と看護師さんも泣いてた。 感染が発覚してから、初めての涙でした。

傷つきそうなことが起きる前に相手を傷つけたり、悲しいこと辛いことをなるべく俯瞰で見て一歩距離を置いたりはまだしも、優しくされることさえからも逃げていた。

自分勝手だったと思う。

けど、あの時は自分のことを、真剣に考えなければいけない時だったんだとも思う。 考え続けて、頭を使いまくることで、心から逃げ続けていた僕に、一年分の気持ちとか想いとかが一気に戻ってきたような感覚がありました。

そうして、ぼくの中に新しい気持ちが芽生えた。

それまでは、とにかく隠すことに躍起になり、アプリでの呼び名意外は教えないし、リアル前は身分がわかるものは全て置いていく、家は教えない、ちょっとでもまずいと思ったら即ブロックは当たり前。嘘は数え切れないくらい付いた。 そんなこんなで、諜報員ばりに「バレるきっかけ」を排除してきました。

が、治療が目標に到達したあの日、

「誰かに言いたい。一緒に喜んでくれる人が欲しい」

そういった、全く新しい気持ちが湧いてきたのをはっきりと覚えています。 気持ちが前を向いたのだと思います。

問題は誰に言うか。

この時、一番に言うべき友達が頭に浮かびましたが、その人に打ち明けたのはそれからさらに5年後。つい最近です。

まず打ち明けたのは、恋愛を意識した人二人だけ。

一人は僕が気持ちをうまく処理できず、逃げ出してしまいました。情けない…。
その次の人とはお付き合いをすることになりました。治療が成功していることや体調の話はしっかりして、お互い合意の上で生セックスもしました。久しぶりの生セックスは気持ちよかったのはもちろん、「繋がれるんだ」と妙な安心感をもらえました。

ちなみに、治療が成功するとほぼ移すことはないそうです。感染に必要なウィルス量がない状態であるという先生の確認もとりました。ポジション的にはウケ寄りだったこともあり、リスクは限りなく少ないだろうという素人判断ではありますが……。タチをやるときも中出しは絶対にしないという約束でしたし、それは守りました。

決して、生を推奨しているわけではありません。性病はHIVだけではないですし、きっとこの行為に関して、人によっては嫌悪感を覚えるでしょう。でも、それがリアルなぼくです。

まぁその方は、それ以外の部分でトラブルが多い人だったので、破局したんですけどね。 でも確実に「打ち明けること」に前向きにはなれた自分がいました。

とはいえ、その後「打ち明けること」で失敗もしたんですけど、それはまた追い追い。

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おばけのポージー

HIV+だけど、わりかし元気に、それなり人生楽しく暮らしています。原体験を元に、当事者ゆえの心の揺らぎに対する向き合い方など、書いていきます。

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